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空木の影 小さな窓に

16
2017  10:34:50

IMGP5842.jpg



「小学校の頃の若葉ちゃん、いつもきらきらしていた。あの頃、私、ずっと若葉ちゃんみたいになりたかった。でも今、昔と違う気がする。ずっと思っていた」

私から転げ落ちた言葉は、保健室の空気を震わせて、若葉ちゃんに触れた。そうして誰かに触れることは初めての経験だった。

「・・・・・・・」

若葉ちゃんは不愉快そうに眉を寄せた。私は続けた。水溜りに人差し指で触れたように、波紋になって自分の発した言葉が世界に広がっていく光景に、見とれていた。

「私・・・・・若葉ちゃんの緑色のガラスの指輪、好き。若葉ちゃんの部屋の中で、あれが一番好き」




IMGP5852.jpg



「きもぉーい・・・・・・」

その言葉で、私には輪郭ができた。誰かに言葉で触れるということは、輪郭ができることなのだと思った。

きもくてぶざまな私は、若葉ちゃんの、石鹸の匂いのコロンが漂う保健室で、しばらくぼうっと座っていた。なぜ突然あんなことを言ったのか、自分でもよくわからなかった。
けれど、鮮やかに浮かび上がった自分の気持ち悪い姿が、奇妙に楽しかった。
世界に触れて感電しているみたいに、まだ私の輪郭が震えていた。






村田沙耶香  「しろいろの街と、その骨の体温の」




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2 Comments

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2017/05/17 (Wed) 01:19 | EDIT | REPLY |   

miki2017  

kazuさん

「しろいろの街と、その骨の体温の」に関しては,たしかに思春期もあるのですが,新興住宅地の閉塞感と,少女の欲望が生々しく表現されていて,興味深く思いました。

自分に向けられる暴力的な言葉を,大切な宝石のように心にしまう少女の心情が,私の心を揺さぶりました。

2017/05/18 (Thu) 00:03 | EDIT | REPLY |   

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